木浪議長メッセージ第1回 2023年の活動にあたって

さらなる一歩を踏みだそう ともに創ろう 未来に誇れる建設産業を

皆さん、こんにちは。日建協議長の木浪です。
第100回定期大会を終え、日建協の2023年度がスタートしました。
組合員の皆さんにおかれましては、日頃より日建協活動に対し、ご理解とご協力を賜り、心より感謝申し上げます。
議長という大役の責任をしっかりと果たせるよう、引き続き建設産業の魅力向上、組合員の皆さんの処遇向上、労働環境の改善をはかっていきます。これから1年どうぞよろしくお願いします。

さて、日本経済は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響により、エネルギー価格や物価の高騰、円安による輸入コストの上昇などを要因とする原材料価格の高騰が、経済に大きな影響を及ぼしています。今年の春闘では多くの業種でベアが実施されましたが、消費者物価の上昇により、実質賃金はマイナスが続いています。また、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向など、日本経済を取りまく不確実性は極めて高く予断を許さない状況です。

 このような先行き不透明な政治、経済情勢のなか、私たちが働く建設産業は、社会経済活動の正常化が進んだことによる国内景気の持ち直しに加え、防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策の推進などにより、政府建設投資、民間建設投資ともに底堅く推移していくことが予想されています。しかしながら、資材価格の高騰や労務のひっ迫などを要因に、2023年3月期の決算においては多くの会社で増収となる一方、利益面については悪化傾向でした。日建協加盟組合における今年の春闘では、3%賃上げによる総合評価での加点措置に加え、昨今の賃上げ機運の高まりも相まって、多くの加盟組合でベアが実施されましたが、業績を理由に一時金が減額となった組合もあり、私たちの処遇改善は一進一退の様相を呈しています。また、労働環境においては、担い手確保のために、働き方改革、女性活躍推進、建設DXの推進など、政労使が一体となり取り組みを進めていることで、着実に改善はしているものの、他産業の労働環境と比べればまだまだ改善の余地があり、今後も継続して取り組んでいかなければなりません。

 現に、日建協が1万人規模で毎年実施している時短アンケートの直近の調査結果では、全組合員の所定外労働時間の平均が40.1時間、外勤技術職にいたっては54.9時間でした。さらにはアンケートに回答した組合員の4.5%にあたる方が100時間を超える所定外労働を行っているとの結果が出ています。また、実際の残業時間と会社へ報告した残業時間との乖離については、約5人に1人の方が「乖離がある」と回答しています。2024年の4月に建設業においても適用される時間外労働の罰則付き上限規制にむけてはもちろんのこと、私たち組合員の心と身体の健康のためにも、労働環境の改善は急務と言えます。

私たちが働く建設産業は、暮らしを支える経済社会基盤を建設、維持管理していく社会資本の担い手であり、災害時には、最前線で地域社会を支える地域の守り手としての役割も担っています。社会にとってなくてはならない存在であるからこそ、産業が抱える課題を早期に解決し、私たちの手で魅力ある産業へと変えていかなければなりません。

このような状況をふまえ、2023年度、日建協は「産業政策活動」と「加盟組合支援」を2本柱として活動を進めます。活動にあたっては、Web会議ツールの活用は継続しながらも、対面での活動を重視し、会って話すことの大切さを改めて感じることができるような組合活動を実践してまいります。
産業政策活動では「政策提言」を重点項目と捉え、活動を進めていきます。政策提言アドバイザー会議、作業所アンケートや時短アンケートの結果などをつうじて建設産業の実態を把握し、行政機関や業界団体などに対して、建設産業が解決すべき課題や産業内の構造的な問題について、働く者の立場から意見発信、提言をしていきます。また、さまざまな団体との意見交換をつうじて、建設産業における働き方改革のさらなる推進を訴えるとともに、担い手確保の必要性についても理解促進をはかってまいります。

 加盟組合支援では「4週8閉所ステップアップ運動」「働き方改革への対応」「賃金交渉」を重点項目として活動を進めます。2024年の時間外労働の上限規制適用は目前に迫っています。これまで訴えてきた4週8閉所や総労働時間の短縮を実現させるのは、「いま、このとき」という強い思いを持って、これまで以上に力強く推し進めます。加えて、2024年以降を見据えた新たな働き方についても検討してまいります。また、私たちが建設産業に誇りを持ち、安心して働き続けるためには、賃金水準の維持・向上が不可欠です。今年度は日建協賃金政策・個別賃金の改訂を行い、引き続き賃金交渉の充実をはかってまいります。

日建協ビジョン2030「誰もがいつまでも働ける 誰からも誇りに思われる産業」の実現にむけて、本日、日建協は新たな執行体制での活動をスタートさせます。ロードマップで定めた取り組み事項や中間目標に沿って、加盟組合の皆さんとは、より連帯した活動ができるよう執行部一同取り組んでまいります。
目まぐるしく環境が変化する時代のなか、私たちが働く建設産業においても大きな転換期をむかえようとしています。これまで加盟組合の皆さんと日建協が、ともに積み上げてきた活動を継承しながら、さらなる一歩を踏みだし、ともに未来に誇れる建設産業を創っていきましょう。