2020年度 女性技術者会議 だれもが働きやすい建設産業であるためには

日建協では、誰もが働きやすい建設産業を実現するためには女性の視点を取り入れていくことが重要と考え、女性技術者会議を開催しています。今年度は、若手女性技術者の今後を見据え、出産・育児を経て復職した、いわゆるロールモデルとなる女性技術者による経験を紹介し、参加者と意見交換を行いました。(11月27日)

パネラーの経歴を聞く


最初にパネラーの皆さんに、ご自身の経歴について発表していただきましょう。

 


私は現場配属中に結婚しました。妊娠後は内業メインにしてもらい、復職後を考えて、産休に入る前に内勤にしてもらいました。入社時は土木職の女性技術者がいなかったので、女性でも働けることを示そうと思い、復職後も現場に戻りたかったけど、現状では厳しかったので内勤として職場復帰しました。


私は現場配属で入社してそこで結婚しました。第1子の産休後は現場に復帰しました。社内では、育休明けでの現場復帰第1号でした。2年後に第2子を出産して、その時も育休明けは現場復帰しました。育児は大変だけど、家族や現場の協力を得て頑張っています。


私は研究職で入社して、その年に結婚しました。その後現場へ異動。現場の上司が「特別扱いはしないが、配慮はする」と言ってくれる、最高の職場でした。さらに研究所に異動となり、そこで出産しました。夫が1年間育休を取ったので、私は2ヵ月で復職しました。その後、海外出張も経験しました。4年後に第2子を出産しましたが、このときも夫が6ヵ月の育休を取ったので、私は2ヵ月で復職しました。さらに翌年第3子出産。今回は私が育休を6ヵ月取りました。会社側も育児に関することに積極的に配慮する雰囲気になってきて、男性も育休取得しやすい環境になってきました。


私が現場配属で入社した当時は、「女のくせに」という人もいて辛い思いもしたけど、仕事を任せてもらえるようになるのはうれしかったです。数年後に結婚して、出産後の仕事について悩んでいたら、「育休中に考えればいい」との上司の言葉に救われました。
第1子の育休後は内業メインで現場に復職しました。さらに2年後に第2子を出産して、現在育休中です。


 

パネラーの皆さんに、質問のある方はいらっしゃいますか?

 


上司の理解があったというのが皆さんに共通していましたが、逆に理解のない上司や同僚に、批判的なことを言われたことはありますか?

 


異動の時に「妊娠しちゃだめだよ。あなたのキャリアに関わるからね」と言われましたが、異動先で妊娠出産をしました。やるべきことをきちんとやっておけば、自分としてはキャリア中断の心配はしていなかったし、会社はちゃんと認めてくれると思っていました。予定表に「子供のお迎え」などプライベートな予定も入れるようにしたら、文句を言う人が減り、ほとんどの人が「いいよ、大丈夫だよ」と言ってくれました。


現場は竣工すると必ず異動がありますが、
生活拠点などはどのように決めたのですか?

 


深く考えませんでした。考えすぎると身動きが取れなくなってしまうので、勢いが大事だと思います。
そして自分がどうしたいのかを会社に伝えることが大切だと思います。


グループワークで討議

目指したいものやありたい姿については

・結婚・出産を経ても現場で働き続けたい。
・現場の所長になって、子育てしながら現場で働き続けたい。
・周囲に産休や育休を取る人が居たら、やさしい言葉を掛けられるような人になりたい。

といった意見がありました。


ありたい姿に近づくために大事なことについては

・組合をとおして制度の充実をはかる。
・上司の理解を得られるように、自分自身の明確なビジョンを持って、会社や周りに主張する。
・お互いを思いやるだけでなく、実際に言葉に出して行動するようにしなければならない。

といった意見がありました。

NGワードとOKワード

続きまして、パネラーの方から妊娠中や復職後に上司や同僚などから言われて傷ついた言葉・カチンときた言葉、それに対して、こういう言い方なら良かったという具体例を、NGワード、OKワードとして発表していただきましょう。


参加者はこんなことを感じた

最後に、会議に参加して気づいたことや感じたことを発表してもらいましょう。

 


「働き方の多様性」この一言に尽きると思います。多様性を認めてくれるような風潮になればいいと思いました。
◆結婚や出産をした後も働き続けようとしたら、会社の制度と上司や同僚の理解があってこそだと確認できました。より働きやすい建設産業になるように、私たちが声を上げ、後輩の意見を聞いてあげたいと思います。
◆多様なロールモデルの一人になりたいと思いました。
◆現場に従事しながら、家事や子育てをしているパネラーの方の話に驚きました。現場で女性が働きながら、子育てすることは難しいと考えていましたが、それは自分の固定概念であったことに気づきました。周りの理解を得るためには、ちゃんと結果を出さなくてはいけないことも感じました。
◆自分が子育てする立場になったらどういった助けが必要なのか、どういう対応をして欲しいのかを周囲に伝えることが大事だと思いました。
◆同世代の女性技術職の方と会う機会は少ないため、とても貴重な機会でした。グループワークでは各々の目指したいものを聞くことで自分自身のモチベーション向上に繋がりました。数年後の自分を想像できずにいましたが、パネラーの方々のように強い意思を持って、今後入ってくる後輩達に伝えて、進んでいきたいと感じました。

おわりに

会議に参加していただいた皆さん、ありがとうございました。近年、女性技術者が増えてきているとはいえ、他産業に比べてまだまだ少ない状況です。建設産業にとって女性活躍の道はまだ平坦ではありません。パネラーとして参加して下さった方々が切り開いた道を、次代のロールモデルとなる方たちで踏み固めて、女性が活躍できる建設産業を、みんなで築いていきましょう。
日建協は今後も、誰もが働きやすい建設産業の実現を目指して活動していきます。