土木作業所で働く組合員の労働環境の改善をめざして

はじめに

日建協は、土木作業所で働く組合員の労働環境の改善をめざして提言活動を行っています。2012年度は10月に実施した「土木作業所アンケート」から得られた組合員の皆さんの声をもとに、地方整備局をはじめとする発注者に対して、作業所における労働環境の実態を伝え、問題の解消にむけた提言を行いました。
ここでは、2013年5月から6月にかけて行った、全国8地方整備局と北海道開発局への提言活動の内容と主な回答を紹介します。

地方整備局への提言

(1)総合評価落札方式について
提 言①
総合評価落札方式の見直しにあたっては、基本理念に立ち返ることが必要です。あわせて、私たち受注者の労働環境をきびしくする仕組みを改めることが必要です。

1)総合評価落札方式(技術提案評価型)の履行確認について明確な基準を作成すべきです。
2)総合評価落札方式の見直しにあたっては、制度の改定にとどまらず、予定価格・調査基準価格を合わせて議論すべきです。

回 答

  • 提案の内容は様々であり、基準の統一は難しいが、履行の確認についてはマニュアル等により簡素化に努めている。履行確認が過度にならないよう考えたい。(北海道、東北、関東、北陸、近畿、中国)
  • 総合評価落札方式については、様々な見直しを行っている。2013年5月にも一般管理費等の算入率の見直しを行っており、今後も情勢を見ながら検討を行う。(四国、九州)

◆回答を聞いて
過度な履行の確認は発注者にとっても業務負担となっており、簡素化は課題となっています。明確な基準の作成は難しいようですが過度な履行確認は防ぎたいと考えていました。


 

(2)工期設定について
提 言②
現場条件を加味した適正な工期設定による発注を徹底すべきです。

1)現場条件が反映された工期設定を徹底すべきです。
2)工期に影響を及ぼす事前協議などについては、工事発注時点で終了しておくべきです。

回 答

  • 発注は現場条件を加味して行っている。条件に変更が生じた場合は各種施策に沿って協議を行うので、申し出てほしい。(関東、北陸、四国、九州)
  • 工事発注時点で事前協議が終了しないこともある。その場合条件明示を行っている。(北海道、東北、関東、北陸、中国)

◆回答を聞いて
発注時点で、事前協議を終了しておくことは困難な場合もあり、条件明示を行っているとの回答ですが、土木作業所アンケートでは不十分との声がありました。今後、条件明示が徹底されるか注視していきます。


 

(3)国土交通省の施工円滑化にむけた各種施策ついて
提 言③
国土交通省の施工円滑化にむけた各施策の運用が進むよう取り組みをおこなうべきです。

1)工事を始めるにあたり、発注者・受注者が出席する三者会議等で、施工円滑化にむけた各施策の運用について確認をすべきです。また、その旨を特記仕様書に記載すべきです。
2)施工円滑化にむけた各施策の運用状況を確認し、改善を図るべきです。また、施策の運用にあたっては、全地方整備局で統一したルールを作成すべきです。
3)設計変更審査会について内容を再度周知徹底すべきです。

回 答

  • 現場推進会議(三者会議)において各施策について話し合いを実施しているが、解釈の違いから運用にバラツキがある。認識統一のために受発注者合同説明会を実施している。(中部)
  • 運用状況についてはヒアリングやアンケートで調べている。その結果を活かし施策の運用改善に取り組んでいく。(関東、中部、中国、四国、九州)
  • バラツキを無くすためにも、その他の施策と合わせて今後も周知を図っていく。(北海道、関東、中部、中国、四国)

◆回答を聞いて
国土交通省も運用にバラツキがあることは認識しており、その改善にむけて受発注者が合同で参加できる説明会を実施している地方整備局もあります。発注者側に運用上の問題がある時は、受注者側から発注者に対して正しい施策の運用を促すことも必要です。


 

(4)片務性について
片務性とは発注者という優位的立場を利用して、受注者に理不尽な要求をおこなうことです。

提 言④
片務性を解消し、受注者と発注者双方が対等な立場で業務をおこなうべきです。

1)片務性の実態を確認し、改善を図るべきです。
2)片務性について理解がすすむよう、工事事務所など現地機関まで受発注者が対等であることを再度周知徹底すべきです。

回 答

  • アンケート等で確認をしているので、改善を図っていく。(北海道、関東、中部、近畿)
  • 施策の活用や、施策の周知をつうじて解決、改善を図っていきたい。また、事務所等に片務性解消につながる取り組みを行う。(北海道、関東、北陸、中部、近畿、九州)

◆回答を聞いて
国土交通省でも片務性があることは認識しており、その解消をめざしています。片務性の解消はなかなか実感できないかもしれませんが、発注者が実施するアンケート等で現状を伝えることが重要です。

提言を終えて

今回の提言活動では、私たちの取り上げた課題が長時間労働など作業所の労働環境に影響を与えていることを、地方整備局側も認識しており、それぞれの整備局では対策を進めていることがわかりました。しかし、その対策はまだ十分とは言えず、受注者側の労働環境改善にまではつながっていません。これらの対策を十分なものにするためにも受注者側からも発注者に対して施策の運用について声をあげるなど行動を起こす必要があると感じました。

今後、日建協では作業所の更なる労働環境改善につなげるべく、国土交通省本省に対して、意見交換を実施する予定です。更には国土交通省以外の作業所での労働環境改善をめざして提言活動を行う予定です。

これからも日建協はアンケートなどをつうじ、みなさんの声を発注者や関係団体に届けます。今後も、日建協活動にご理解ご協力をお願いします。