日建協加盟組合 2023年度 会社訪問 ~企業経営者に聞きました~

日建協では、毎年9月から11月にかけて加盟組合企業を訪問し、日建協活動への理解や時短推進活動への協力を求めるとともに、建設産業が抱えるさまざまな課題について企業経営者と意見交換を実施しています。今年度は以下の2つのテーマについて意見交換を行ったほか、2022年11月の時短アンケートの結果をもとに、それぞれの企業が抱える課題についても意見を交わしました。
その中から、主な取り組みや企業経営者の意見を紹介します。

1.  2024年4月に適用される時間外労働の上限規制への対応について

◆2024年4月に時間外労働の上限規制が適用されますが、貴社の取り組みや現状認識(2024年4月にむけた見通し・社員への浸透状況等)をお聞かせください。また、実際の労働時間と会社に報告している時間との乖離を防止するための具体的な取り組みをお聞かせください。

【勤怠システム関連】

■勤務時間の日々申請、日々承認の徹底に加え、PCログと会社に報告した労働時間との乖離状況をシステムで自動的に精査する仕組みの構築を進めている。

■労働時間管理について、事務系はPCのログで確認ができるが、現場では困難なため週単位の勤務予定だけではなく作業内容についても店社側と共有し、残業、休日の管理をしている。

■顔認証システムを全支店・現場事務所で導入予定。現場事務所では顔認証をしないと鍵が開かない仕組みにして、入退室時刻を管理し、PCログの残らない居残り残業の防止をはかる。

■勤怠記録時間とPCログオン・オフ時間に30分以上の乖離がある場合にはその理由を報告し、承認を得なければならないシステムフローを採用している。

【業務改革関連】

■本社に2名、各支社に土木・建築各1名ずつ働き方改革に取り組む統括所長を専任配置し、現場の時間外労働時間の実態把握と削減、働き方や業務改善に取り組んでいる。専任の統括所長が各作業所の状況を把握し、達成が難しそうな現場には、工事部長に報告することで、増員・アドバイスなどの対処を行っている。

■業務改善部が勤務報告の入力状況を毎朝チェックすることにより、日々申請、日々承認の習慣付けがかなり進んだ。

【意識改革関連】

■上限規制への対応や労働時間の考え方をマニュアルにして社員に配布し、支店で説明会を実施した。

■作業所のスライド勤務を推奨している。まずモデル現場を作り、支店によっては強制的に朝礼の交代制をやらせるという動きもある。

■会社の目安箱に、適正な労働時間の申告ができない雰囲気があるという意見が投稿されたため、アンケート調査を実施した。その結果を受けて、ポータルサイトで適正申告のメッセージや方針を伝えるとともに、未払い残業代の精算を行い、従業員の意識改革を促した。

■すべての従業員が単に「規制される」意識を持つことのないように、今年度下期にeラーニング・テスト、説明会などを実施する予定。

■春と秋、社長の各支店訪問に際して、法定休日・所定休日の違いの説明、適切な勤怠管理の重要性を伝えている。

実際の労働時間と会社に申請している残業時間の乖離時間は少なくなってきているものの、まだ一定数存在しており、各社とも乖離の防止には苦労している様子がうかがえました。パソコンのログ管理は多くの会社が導入しており、勤務報告の日々の申請・日々の承認を徹底している会社は乖離時間も少なくなってきているようです。中には顔認証システムを導入して入退室時間を管理する取り組みを行う会社もありました。
また、上限規制適用を控え、多くの組合員の皆さんが残業時間の上限を45時間と意識しているというデータも出ています。目標管理も大切ですが、45時間以上残業してはいけないわけではありません。実際の労働時間を正しく申請するように心がけましょう。

2.  働き方改革の推進について

◆働き方改革を推進するにあたり、貴社の4週8閉所(4週8休)実現にむけた取り組み(ロードマップ)について進捗状況と今後の見通しをご教示ください。

【4週8閉所にむけた取り組みや今後の見通し】

■4週8閉所できない現場は上限規制に対応できないと考えており、原則受注しない方針としている。

■協力会社が元請会社を選ぶ時代が来ると思う。4週8閉所を確保したうえで日給月給制の協力会社が土曜日勤務したのと同等の労務費を上乗せした単価で契約している。

■土日作業も含めた工程で受注する企業が増えて、4週8閉所に真面目に取り組む企業が不利益を被らないよう、個社だけでなく産業全体での意識・構造改革も必要だ。

【作業所業務の負担削減に関する取り組み】

■デジカメで撮影すれば鉄筋検査の帳票を自動で作成するシステムやボルトの締め付け完了を判別するシステムを試行的に導入し、現場の省力化に取り組んでいる。

■現場の事務処理軽減のため、資材・PC周辺機器・事務用品などをKOBUY(購買業務効率化プラットフォーム)で発注し、請求処理は内勤で一括して処理するようにする。

■Boxによるプロジェクト管理の導入、社内イントラの刷新などの取り組みを進めている。議事録のAI作成やChatGPTの導入も検討している。

■現場書類の削減などに対応する職員を採用し、負担軽減や作業効率アップにむけた取り組みを始めた。

【工事書類の削減や省人化にむけたDXの活用など業務効率化への施策】

■現場にウェブカメラを設置し、遠隔で現場を確認できるようにしたり、デジタルサイネージを内勤で集中管理して掲示物を更新できるようにしている。

■モバイルを使用しての帳票作成に取り組んでいる。また、現場にウェアラブルカメラを導入し、店内の技術者とリアルタイムで連携し、現場での解決策の立案、判断の支援を行っている。

■少ない人数でできていれば生産性が向上したと言えるが、今は残業時間削減のためアウトソーシングをしている状態。人数をかけた労働時間の削減は生産性向上とは言えない。

日建協からの提言に期待

★各大学での出前講座では、建設業の魅力をより発信してほしい。

★労働集約産業である建設業において、安全、近隣対応など工事以外の対応が増えている。発注者への働き掛けを強めていってほしい。

★国交省発注工事で年度繰越の出来高に間に合わせるため土曜日の作業を強いられた。国交省へも提言してほしい。

★ゼネコン・協力会社の労務不足が深刻なことに対して、日建協から建設業に従事する人への税制の優遇や補助・手当の支給などを国に働きかけてほしい。安い賃金でも建設業従事者が豊かになるような政策を提言してほしい。

会社訪問を終えて

各企業経営者が2024年時間外労働の上限規制への対応や、4週8閉所への取り組みに苦労しながらも、働き方改革の推進、魅力ある建設産業の実現にむけて真摯に取り組んでいる様子がうかがえました。日建協では今回得られた各社の取り組みや貴重なご意見をもとに、産業の魅力向上に引き続き取り組んでいきます。