角議長メッセージ第4回 2022年賃金交渉を迎えるにあたって

日本経済は、終わりの見えないデフレや超少子高齢化などの構造的問題とともに、中国の経済不安や人権問題、脱炭素社会への動きといったグローバル経済環境の変化などの課題を抱えつつ、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況から回復の途にあります。

先行きについては、社会経済活動が正常化にむかうなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあり景気の持ち直しが期待されるものの、供給面での制約や原材料価格の高騰による下振れリスクを孕んでいます。また、感染症による内外経済への影響や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要もあります。

建設産業に目をむけると、ゼネコン各社の2021年度業績は、上期では前年と比べて売上・利益が減少しているものの、受注高は前年のコロナ禍による営業活動停滞の反動もあり、増加傾向にあります。通期見通しでは、収束しないコロナ禍、受注競争の激化、資機材・原油価格の高騰などによる影響の程度に濃淡が出るものと思われます。さらに、産業の足元では他産業に先駆けた就労人口の先細りや時間外労働の上限規制への対応などの課題が山積しています。

このような社会情勢のなか、連合は2022春季生活闘争の方針において
1.経済の後追いではなく、経済・社会の活力の原動力となる「人への投資」を積極的に求める。
2.賃上げに取り組むことで「底上げ」「底支え」「格差是正」を加速させ、分配構造を転換する
・  突破口として経済を自律的な回復軌道にのせる。
3.建設的な労使交渉を通じ成果の公正な分配をはかり、広く社会に波及させていく。
の三点を掲げています。

日建協加盟組合の2021年賃金交渉においては、35加盟組合のうち11組合がベースアップを獲得し、一時金についても14組合が昨年度実績を上回る額で妥結するなど、ここ数年の賃上げの流れは継続されました。また、初任給については、多くの加盟組合において「日建協個別賃金」で理想的な水準(先行ライン)としている24万円に到達しています。これらのことから、近年は会社側が産業としての課題に真摯に取り組んでいるものと思われます。一方で、年間一時金要求にもかかわらず、夏季一時金のみの回答にとどまった組合が7組合あったことから、先行きの不透明さが賃金交渉に影響を及ぼしていることが伺えます。

2022年の賃金交渉においては、少なからぬ困難も予想されますが、「あるべき賃金水準」にむけた賃金水準の維持・向上とともに、働き方改革の実現にむけ、組合員一人ひとりが高い意識で取り組んでいく必要があります。産業の魅力化や担い手不足などの課題の解決へむけた取り組みの前提となる賃金制度は「安心して働き続けられる産業」への重要な足がかりでもあります。魅力あふれる産業をめざして、みんなの声をひとつに2022年賃金交渉に取り組んでいきましょう。

日本建設産業職員労働組合協議会
議 長    角    真  也