2021年賃金交渉にあたって

2021年賃金交渉にあたって

 日本経済は、日本の抱える構造課題に加え、米中貿易摩擦などによるグローバル経済環境の悪化、コロナ禍の影響による全世界的な経済活動の停滞、雇用情勢の悪化、感染症予防と収入不安による消費マインドの低下などにより、リーマンショック時を上回る厳しい状況となっています。
先行きについては、経済活動の再開により抑制されていた需要が徐々に戻りつつあるものの、観光・飲食・鉄道・航空など特定の産業は依然として大きな影響を受けており、見通しは、感染症の抑制、ワクチンの普及状況、グローバル経済の動向などもあり、極めて不透明な状況です。

このような社会情勢の中、連合は2021春季生活闘争の方針を掲げています。

  1. 日本の抱える構造課題とコロナ禍によって明らかとなった社会の脆弱さを克服し、将来世代に希望がつながる持続可能な社会の実現をめざす。
  2. 感染症対策と「経済の自律的成長」を両立していくためにも、雇用の確保を大前提に、労働条件の改善による消費の喚起・拡大をめざす。
  3. 「経済の自律的成長」と「社会の持続性」を実現するためにも、すべての働く者が安心・安全に働くことのできる環境整備と分配構造の転換につながり得る賃上げに取り組む。

以上の3点です。

 建設産業に目をむけると、2020年度上期では売上・利益が減少しており、受注高も多くの会社が前年を下回っています。通期見通しにおいては、コロナ禍の影響により、産業や分野ごとの需要の増減にあわせて、受注案件を乗り換えられた企業と対応できなかった企業で、業績の落ち込み幅に明暗が分かれる可能性があります。さらに、産業の足元では他産業に先駆けた就労人口の先細りや時間外労働の上限規制への対応など産業としての課題が山積しています。

 日建協加盟組合の2020年賃金交渉においては、月例賃金で半数以上の加盟組合がベースアップを獲得し、一時金も半数以上が前年を上回る水準となりました。初任給についても、ここ数年で多くの加盟組合で引上げが行われました。近年は会社側の姿勢も変化し、産業としての課題に真摯に取り組むようになってきています。

 2021年の賃金交渉は、厳しい交渉になることが予想されますが、「あるべき賃金水準」にむけて賃金水準の維持または向上を目指すだけでなく、働き方改革の実現にむけ、組合員一人ひとりが高い意識で取り組んでいく必要があります。産業の魅力化や担い手不足などの課題の解決へむけた取り組みの前提となる賃金制度は「安心して働き続けられる産業」への重要な足がかりでもあります。ともに力を合わせて2021年賃金交渉に取り組んでいきましょう。

日本建設産業職員労働組合協議会
議  長    鈴 木 誠 一

※ こちらもご参照ください。→ 機関誌 Compass 賃金特集増刊 (2021年2月号)