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広報:日建協第86回定期大会をスタートとして、いよいよ2009年度の活動が幕を開けました。今回は、2008年度をもって退任された青本前議長と2009年度より日建協の新たな舵取り役となった福島新議長でこれからの日建協活動について語っていただきたく対談を企画しました。先ずは2009年度の日建協を牽引していく福島新議長にこれからの意気込みをお聞きしたいと思います。

 ●意識を変え、声を上げていこう

福島:現在、日建協では「無報酬業務の解消」を提言していますが、経験上、私自身も肌身で感じていることです。最近では作業所に求められるものの全てが増えていくばかりです。効率化するための「工夫」はしているのですが、私たち請負側にも「やりますよ」という意識が強い。しかし、そういう環境下で仕事を続けてしまうと、特に若い職員は「これは誰の仕事なのか?」という疑問すら持てず、結果、全てを抱えきれず離職してしまう。若手に限らず諸先輩方も、みんな単純に「もの作り」が好きでこの産業に入ったと思うんですよね。その「大きいものを作りたい」という気持ちや「この産業が好きだ」という思いが業務の明確化されていない大量の書類作成によって隠されていき、離職につながっていく。「辞める前に思いを言ってもらえなかった悲しさ」をこちら側は感じます。産業や労働環境に対して思うことがあるなら、黙らずに、皆さん一人ひとりが自分の意識を変えて、どうかそれを言ってほしい。そしてそれが言いっ放しで終わることがないよう組合は拾い上げてほしい。それが個々の加盟組合で解決できない問題であれば日建協が拾い上げます。そういう意味で皆さんと連帯していけば、きっと大きな流れになるのではないでしょうか。

福島新議長

 ●連帯を考える

青本:今、『連帯』という言葉がでましたが、私は議長就任からしばらくの間『連帯』という言葉の意味について考えていたんですね。背景として社会は個人の意識の多様化傾向で、『連帯』とは逆の流れにあった。当然ながら、賃金交渉や統一土曜閉所運動は連帯による相乗効果を狙っているし良い結果も導きやすいのですが、この一年で得た自分なりの連帯に対する回答は『必ずしも必要な全てではない』ということです。例えば、現在の日建協は時短推進活動をワーク・ライフ・バランスの一環として位置付けています。かつての時短推進活動は『過重労働にある人達に平等に時短を推し進める』というものでした。一方、ワーク・ライフ・バランスは組合員一人ひとりの個人化に沿った考え方で、多様性を重視するものです。それに沿って考えれば、個人によって連帯の意味合いもまた変わってきます。今の社会風潮に合った連帯とその本質は一体何なのかということを考える必要があるでしょうね。

福島:私の考える『連帯』も青本前議長の考える『連帯』と同様です。「ハチマキ」「コブシ」のような旧来からのイメージを引きずるものではない。ワーク・ライフ・バランスの観点から考えれば今の時代にマッチングした連帯があるべきで、それは個人の行動を確立するための連帯であり、創造していく過程での連帯だと考えます。何から何まで、全てにおいて『連帯』とは思っていません。実は先日も青本前議長と雑談中に「旧来からの『連帯』に変わる新しい言葉を作っちゃおうか」と話したことがありましたね(笑)

青本:イデオロギーの転換は難しいですが、言葉はリニューアルできるし、手段を変えていくことはさほど難しいことではありません。従来のやり方での連帯では社会の流れと乖離していくでしょうね。

青本前議長

 ●ワーク・ライフ・バランス実現にむかって

広報:2009年度の日建協は「変わる意識と変える努力で 実現させようワーク・ライフ・バランス」というスローガンを掲げています。なかでも「変わる意識と変える努力」はワーク・ライフ・バランス実現への重要なキーワードだと思いますが?

青本:ワーク・ライフ・バランスは個人が充実感を引き出すことですが、それを仕事から持ってくる人もいるし、生活から持ってくる人もいる。ただどちらに偏っても駄目なことは時短アンケートによって数値でもハッキリでているし、バランスはその人自身にしか判断できない。『ワークとライフのバランスから充実の最大化を自分自身が考えること』は過去になかった考え方です。「仕事が何時間だと充実するのか?」自分自身で最適化へ向けて考えるのです。自分が描いたバランスに向けて動くのです。思考し行動する。ワーク・ライフ・バランスは一人ひとりの変わる意識と変える努力があって初めて実現できるのです。

福島:「変わる意識」というのは「自分が」ということですよね。作業所ではそんなことを考える時間すらないというのが現実でしょうし、これまでの業界の「慣習」や「しきたり」と考え、思ってみても実際の行動に起こせないという方もいるでしょう。やはりそこは自分自身が意識して変えていかなければワーク・ライフ・バランスの実現には結びついていかない。それにはやはり努力というものが必要です。変わる意識と変える努力というのは不可分なペアだと思います。

青本:また「変える努力」というのは「変わる意識」を「産業全体へ広げていこう」ということでもあります。建設産業は発注者が上位であるように考えてしまい、言えることがあるにもかかわらず我慢してきた。それはどこか弱者的な意識があるのかもしれない。しかし産業そのものがワーク・ライフ・バランスを確立するためには、その弱者的な意識を変えていく必要があります。「変える努力」「変わる意識」という言葉には産業全体のワーク・ライフ・バランス実現への願いもまた込められていると思います。

 想いは受け継がれ
 未来へと続いていく

 ●21世紀型の働き方をめざして

福島:社会意識の変化という後押しで、現在は自分にとってのワーク・ライフ・バランスを考えやすい状況下にあると思います。ただ考える人がまだ一握りの人たちに過ぎない。今後はこれまでそういうことを考えてこなかった人たちに対し、考える環境の提供が必要になってきます。ワーク・ライフ・バランスという言葉もよく聞かれる言葉になり、一人ひとりが自分にとってのワーク・ライフ・バランスについて考え動く契機を掴める所まできています。今度はその掴む手をださせたい。現在は双葉がでただけの状態ですから、枯れて土に埋もれてしまう前に、太陽に当てて大きな樹に育てていくのがこれからの日建協の役割だと考えます。
 色々な機会に同様の話をさせてもらっていますが、私が思い描く21世紀とは、さまざまな形の超高層ビルが建ち並び、車が空を飛び、緑豊かで自然と共存する漫画のような未来都市です。実現できるものと実現できないものは確かにありますが、決してあり得ない話ではありません。「心と体にゆとりを持った」21世紀型の働き方もまた夢ではないはずです。好きじゃないですか。やはりこの産業が。楽しく建物を造れるような方向へ向かっていきたいと思いますよね。

広報:2009年度の日建協執行部もワーク・ライフ・バランスを軸に、働きがい・産業としての魅力・労働条件の向上を目指し活動してまいります。加盟組合の皆さん、よろしくお願いいたします。


Compass Vol.782 一括PDF (12.1MB)

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