【2018 新春対談】日建連 有賀事務総長に伺います!

日建連が取り組む 2018年の課題について

久保田 明けましておめでとうございます。日建協新春対談として、日建連の2018年の取り組みについて、有賀事務総長に伺います。

 

有 賀 おめでとうございます。本年は、建設業界が一丸となって、再生と進化に向けて立ち上がる年になります。30年後になって、「東京五輪の2年前が転機だった」 と、皆が思いを馳せる年にしないといけません。その中で、日建連活動の最重要課題は、「週休二日」 と 「建設キャリアアップシステム」 の実現です。「週休二日」 は当然ですが、「建設キャリアアップシステム」 についても、その重要性を建設業界で働くすべての人達にしっかり認識していただきたいと思っています。

 

久保田 2015年に日建連で作成された 「建設業の長期ビジョン」 のタイトルが、「再生と進化に向けて」 ですね。

 

有 賀 建設業界の再生と進化に向けた課題を整理すると、まず究極の目標は 「世代交代」 です。人口減少社会でも、建設業界を担う人材を間断なく確保できるようにしないといけません。そのための基本的な課題は 「処遇の改善」 です。長期ビジョンでは 「賃金の改善」 をはじめ6項目の課題を提起していますが、その中でも重要な一つが 「週休二日」 です。

「働き方改革」 への取り組みについて

久保田 「働き方改革」 では、労働基準法の36協定の限度時間が適用されていなかった建設産業にも、罰則付きの時間外労働規制が適用されることとなりました。

 

有 賀 「働き方改革」 の2大テーマは、「長時間労働の是正」 と 「週休二日」 です。この2つが実現することで初めて、建設業界も他産業と同じ人材獲得競争の土俵に上がることができるのではないでしょうか。

 

久保田 建設産業は社会のインフラを担う重要産業であると自負していますが、他産業と比較すると労働環境は大きく見劣りします。まずは 「長時間労働の是正」 について日建連の取り組みについて教えていただけますか。

 

有 賀 「長時間労働の是正」 は、政府と社会の強力な要請であると捉えています。建設業界も労働基準法の時間外労働の罰則付き規制を受け入れるよう、石井国交大臣から強く要請された際に、日建連の中村前会長は即座に受入を表明しました。この決断こそが、正に新たな展開を生んだのであり、政府と経済界から建設業界の週休二日への協力姿勢を引き出す端緒になりました。罰則付き規制を建設業界が受け入れたことで、政府と経済界から驚くほどの支援を引き出すことができました。
「時間外労働の是正」 は必ず実行されます。日建連でも、段階的な上限規制の実施を自主規制として打ち出しています。昨年発表時に 「試行」 としていたのは、改正法が国会に提出すらされていない段階であったためです。自主規制は余程のことがない限り変更は考えていません。いずれ罰則が適用されるのですから、日建連会員企業は当然実施するはずで、既に動き出している会社も少なくありませんし、地方業界や中小業界も必ず対応してきます。時間外労働が長いのは、建設技能者以上にゼネコン社員の問題です。ゼネコン社員の時間外労働を減らすために、現場の 「週休二日」 が絶対に必要だと考えています。

 

久保田 作業所には 「週休二日」 が絶対に必要とのことですが、私も作業所勤務時には土曜日出勤が当たり前でした。しかし、現場から離れている今だから感じるのは、それは当たり前では無いということです。

 

有 賀 「週休二日」 を実現する、最初で最後のチャンスが到来したのではないでしょうか。「週休二日」 は、最も困難な課題です。世の中の時間軸が変わらないと、建設業界がどんなに頑張っても実現できません。「とても無理」 と業界の誰もが思っていたものが、国をあげての 「働き方改革」 の大きなうねりの中で、今突然、実現の可能性が見えてきました。「週休二日」 ができないと 「長時間労働の是正」 もできません。それに限らず、「週休二日」 を実現する過程では、技能者の雇用形態の問題、社会保険や建退協の問題、重層下請の産業構造など、あらゆる建設産業の後進性の是正が進みます。「働き方改革」 が建設産業を変えるのです。だから、難しいのは当然です。

「週休二日」 実現のために必要なこと

久保田 私たち自身が建設産業を変えていかなければいけないと思います。そして、発注者にも建設産業の実態を理解していただき、協力していただくことも必要だと思います。日建連の実行計画にも盛り込まれていますが、今後どのように取り組んでいくのでしょうか。

 

有 賀 発注者に理解を求めることは明確です。建設産業の総労働時間は、他産業の平均より年間約300時間も長くなっています。これを是正するには、適正な工期で契約していただくことが欠かせません。営業活動をつうじて、お客様にご協力いただく努力が最も大切ではないでしょうか。日建連では 「週休二日」 の理解を得るため、お客様向けパンフレットを作成しているところです。「週休二日」 に伴い増加するコストについて、負担の協力をお客様にお願いすることも大切ですが、建設工事の価格は、様々な要素が総合された市場価格で形成されています。お客様の了解を得た価格のなかで、「週休二日」 のコストを最大限吸収する努力も必要だと思っています。また、不動産など一部の業界からは、「週休二日には協力するが、土曜閉所はいかがなものか」 といった声が上がっているのも事実です。確かに、ローテーションなどの工夫で土曜閉所を避ける方法もあるとは思いますが、業界一丸となっての取り組みを進めるには土曜閉所が一番わかりやすく、これを基本にする必要があるのではないでしょうか。その上で、工事種別や工種によって様々なメニューを各社が開発し、提供していくことになるのだろうと思います。

 

久保田 土曜閉所は日建協も求めてきたものですので、実現にむけてともに努力をしていきたいと思います。

建設キャリアアップシステムについて

久保田 「建設キャリアアップシステム」 についてのお考えを聞かせていただけますか。

 

有 賀 建設キャリアアップシステムの実現は、週休二日と並んで、建設業界を変えるもう1つの重大なプロジェクトだと思っています。このシステムは、技能者の資格や就業履歴をキャリアカードに登録し、作業所に入場する都度、カードリーダにかざして就業履歴を蓄積するもので、技能者はその技能に応じた待遇を受けることができるようになります。特定の企業と雇用関係のない技能者が、言わば 「オールジャパン建設 (株) 」 の社員になるようなもので、建設技能者の人権宣言です。現場管理の面でも画期的なシステムとなり、万一大量の難民が我が国に流入するような事態が生じても、現場の混乱を防ぐ一助となるものであると考えています。

労働組合に期待すること

久保田 最後に、日建連として労働組合の活動に期待することはありますか。

 

有 賀 今日の建設業界の最大の課題は、担い手の確保で、この課題を解決するのは労働組合の力が必要だと思っています。皆さんには、自分たちの職場の問題、さらに勤労者の眼から見た建設業界の在り方について、どんどん発信していただきたいと思います。労働問題の思い切った方向転換に、経営者側ばかりがシャカリキになるのは、世間の眼には奇異に映るかも知れません。「長時間労働の是正」 や 「週休二日」 の進みが遅いようなら、日建連や会員企業を臆せずに批判して下さい。
また、建設業界には、専門紙という大きな武器があります。日刊の全国紙が3紙もある産業は建設業界だけです。大手から中小、零細に至るまで、建設業界の経営者はみんな読んでいます。私は、働き方改革の記事が毎日一面に載るよう、多くの団体に話題を提供するよう要請していますし、日建連の会議はできるだけオープンにしています。日建協も、活動を記事として取り上げてもらい、存在感を高めていただきたいと思います。今の世の中は非常に動きが速いですが、何でも言えて、何を言っても唇が寒くならない環境であると思います。

逆に言えば、言わないと置いて行かれるのではないでしょうか。それと、統一土曜閉所運動については、ぜひ一緒に取り組みを進めて行きましょう。

 

久保田 今ほど労働組合の活動が求められている時代はないと思っています。所定外労働時間の削減は、私たち建設産業で働くものの生活を豊かにするために、必ず実現しなければならないと思っています。本日はありがとうございました。

 

一社) 日本建設業連合会 事務総長  有賀長郎 氏  プロフィール
昭和46年 旧建設省入省
平成10年 旧建設省  大臣官房審議官
平成18年 社) 日本土木工業協会  専務理事
平成23年 社) 日本建設業連合会  事務総長 (現職)

 

対談を終えて


 

所定外労働時間の削減や 「週休二日」 の実現を、この機を逸することなく成し遂げるべきものであるとの認識を強くしました。日建協は、引き続き私たちの労働環境の実情を各所に訴えていきます。政府が主導している 「働き方改革」 は、私たち自身の生き方を見直す、大きな契機になるものと考えています。ぜひ、国や会社がやっているからではなく、皆さんにも自身のワーク・ライフ・バランスについて考えていただきたいと思います。皆さんの思い描く姿を実現させ、建設産業のより良い未来につなげるため、ともに頑張りましょう。

 

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