国土交通省・日建協 2016年新春対談 建設産業を未来につながる魅力ある産業に

2-3-01title2-3-02tanaka加盟組合の皆さま、新年明けましておめでとうございます。旧年中は、日建協活動への多大なるご理解と積極的な参加を賜りまして、誠にありがとうございます。本年も引き続きのご支援、ご協力をお願いいたします。

建設産業を取り巻く情勢は大きく動きだしました。この流れは私たちの労働環境を改善する大きなチャンスです。一人ひとりがしっかりとこの流れを捉え 「ワーク・ライフ・バランスの実現」 にむけ、さらに一歩を踏み出しましょう。そして、加盟組合が連帯して活動を進め、「働きがいのある・魅力あふれる建設産業」 にしていきましょう。

新たな年を迎えるにあたり、このかわりつつある建設産業を力強く牽引されている国土交通省の土地・建設産業局建設市場整備課長の木村実氏と、今後の展望と課題について対談を行いました。

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田中

新年おめでとうございます。木村課長は、昨年7月まで復興庁で東日本大震災の復興事業にご尽力されてきたと伺っております。当時の苦労話や今後の課題などお聞かせください。また現在も、復興工事のために東北地方で頑張っている多くの仲間に対し、激励の言葉をお願いできませんか。

木村

2-3-11東日本大震災は、東北地方の沿岸部を中心に広域にわたって地域がほぼ壊滅状態に至る大災害でした。復興事業だけでなく、発災直後の捜索や応急対策では、自衛隊が現地に速やかに到着できるよう道路啓開を行うなど、地域の建設業が第一線で活躍されました。地域の守り手が建設業であることを改めて認識させられました。私の担当は福島県でしたが、地震・津波被害に加え、福島第一原発事故により広範囲にわたる放射能汚染で避難指示の長期化が余儀なくされ、除染や長期避難者対策、賠償などの要素も加わり、政策の連携、組合せ、バランスに大変苦慮しました。復興事業では、全国から多くの建設業の皆さんにご尽力いただきましたが、厳しい環境の中、例えば常磐自動車道の早期開通は被災者を大いに元気づける出来事となりました。関係の皆さんの頑張りには心より敬意を評します。

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田中

さて昨年は、改正品確法に関する運用指針が策定され、また、建設産業活性化会議などで具体的な内容を示されましたが、建設産業の現状について、どのようにお考えですか。

2-3-16木村

建設産業は高齢化や若年入職者の減少という構造的な課題に直面しています。今後も我が国全体としては生産年齢人口が減少していくことは不可避であり、担い手の確保と生産性向上の両面から手立てを講じていく必要があります。適正な賃金水準の確保や社会保険への加入促進、休日の拡大などの処遇改善策はもとより、改正品確法等の主旨の徹底、若者や女性の活躍推進、教育訓練の充実強化、施工時期の平準化など、様々な施策に取り組んでいるところです。

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田中

日建協のアンケートでは、外勤技術者の1ヶ月の平均所定外労働時間約80時間の4割が土曜日出勤によるものです。土曜日が休めれば大きな改善につながるとして、2002年から建設産業労働組合懇話会の仲間約10万人と年2回「統一土曜閉所運動」に取り組んできました。昨年6月の運動から建設市場整備課を窓口に国土交通省より後援をいただき、改めて感謝申し上げます。

木村

いまの若い方々はオフの充実を大事にする世代です。したがって、今後、若年者の入職を進めていくためには、週休2日制をはじめ休日の拡大に向けた取り組みは不可欠だと思います。国交省としても、統一土曜閉所運動の取り組みとその進捗には大変注目しています。

田中
次回6月の運動から、全国の地方整備局にも啓蒙ポスターを送付させていただきたいと考えています。週休2日に近づけるためにも、国土交通省直轄工事での週休2日(4週8休)モデル工事を、地域や事業規模などを問わず、より多く実施し、具体的に取り組みを進めていただけませんか。

木村

現在、直轄工事においてモデル工事の試行を始めています。現場を一斉閉所するのは難しいケースもあり、交代で休日取得するなど工夫しながら進めていると聞いています。まずは、週休2日普及の障害となっている課題の抽出・整理を行い、次のステップに進んでいきたいと考えています。

田中

2-3-12今後は他の発注者にも働きかけ、社会的注目度の高いプロジェクトにおいても4週8休モデル工事を選定されるなど、その主旨や効果を広く社会に広報していただくようお願いします。

木村

担い手の安定的な確保は業界全体の課題です。関係者間で検討していきます。

 

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田中

2-3-15これまで日建協では、稼働日と不稼働日を区分し、合わせたものを 「日建協標準工期」 として提言してきました。日建協の作業所アンケートでは、半数以上の作業所で 「完成期日ありきの逆算工程での短工期発注が原因で、長時間労働せざるを得ない」 と答えています。企画、調査、設計、施工のそれぞれの段階において適切な期間を確保したプロジェクト全体工期の適正化が必要だと考えています。

木村

適正な工期の設定に向けて、発注者、設計者、施工者それぞれが意識を共有し取り組んでいかなければいけません。事業スケジュールありきの発注の実態等について現場の声も聞きながら検討していく必要があります。

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田中

国土交通省には監督官庁として、改正品確法の基本理念を建設産業内外へ浸透させるために、民間工事への波及にむけた取り組みを推し進めていただきたいですね。

木村

国交省では、今年度を改正品確法運用元年として、その適切な運用を各公共発注者に働きかけてきたところです。まずは公共工事での浸透をしっかり推し進めることにより、民間工事にも広がっていくことを期待します。

2-3-14田中

国土交通省の「公共建築工事における工期設定の基本的考え方」をベースに、日本建設業連合会(日建連)では「適正工期算定プログラム」を策定中です。使用にあたっては適用範囲や評価方法、第三者機関による制度化の要否など、十分な議論が必要だと思います。工事工程の適正化への指標となることを期待しています。

木村

「公共建築工事における工期設定の基本的考え方」 については、官庁営繕部の取り組みとして、国交省だけではなく全国の自治体に活用してもらうことを念頭に作成されています。日建連の適正工期算定プログラムが、公共のみならず民間工事にも適用され、そうした動きを官民ともに広げていくことが大切であると考えています。

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田中

技能労働者の多くが日給月給制であり、また賃金水準が全産業平均より低いため、土曜祝日も働かないと生活が成り立たないことが、現場を休日に稼働させる理由の1つとなっています。技能労働者の処遇を改善することは、私たち組合員の労働環境改善にもつながり、建設産業全体の魅力の向上になると考えています。

木村

2-3-17技能労働者の処遇改善として、まずは適正な賃金の確保と社会保険の加入促進を進めていくことが大切です。社会保険については、加入企業に限定した直轄工事での取り組みなどもあり、一次下請企業まではかなり加入が進んでいると見ていますが、二次、三次の下請企業へどう浸透させていくかが今後の課題です。法定福利費の内訳明示を盛り込んだ標準見積書の普及がそのカギとなると考えています。また昨年8月に、建設業関係者及び有識者を交え、建設技能労働者の経験が蓄積されるシステムの構築にむけた官民コンソーシアムを立ち上げました。登録する本人情報の範囲、現場情報、就業情報をどのように登録していくのか、開示情報と非開示情報の線引きなど、基本仕様の詳細について検討しています。大枠の方向性について各業界団体の意見を集約し、建設業界全体の理解促進と意識の共有を進めるため、国交省としてさらに汗をかいていく必要があると考えています。

田中

このシステムの構築により、技能労働者の処遇改善をはじめ、建設現場におけるQCDS管理の向上、重層下請けなど様々な構造的問題の解決につながることが期待されています。育成の問題をどうしていくかなど、広範で様々な課題が山積していますが、先ずは関わる者のメリットを共有していくことが大事です。

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2-3-13田中

昨年、国土交通省と日本経済団体連合会との懇談会では、建設産業の担い手確保・育成にむけ 「新3K 『給料・休日・希望』 を与えていく産業にしていくことで意見が一致した」 との報道がありました。週休2日制の実現や女性の活躍にむけ、今後の具体的な取り組みについて教えていただけませんか。

木村

週休2日モデル工事の実施により、週休2日制実現にむけての課題・問題点を抽出し、休日の拡大にむけ取り組みます。また女性活躍については、5年で倍増という目標を打ち出しています。現在、官民を挙げて、女性活用のモデル現場、女性応援ポータルサイト、なでしこ工事チームの立ち上げなど各種の取り組みを進めているところです。

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田中

最後に、日建協をはじめ、建設産業で働くものに対しメッセージをお願いします。

木村

建設産業が、新たな局面に移行する一つの転換期を迎えていると考えています。新たなステージにむけ、一緒に取り組んで行きましょう。

 


 

国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課
建設市場整備課では 「建設業における組合制度に関すること」 「適切な賃金水準の確保や社会保険等への加入徹底等をつうじた技能労働者の処遇改善にむけた取り組み」 「建設業者の労働力及び資材の調達に関すること」 などを担当しています。

 

建設市場整備課長 木村 実 氏 略歴
1989年 国土庁入庁
2005年 国土交通省 国土計画局総務課企画官
2008年 同 大臣官房人事課企画官
2010年 同 国土計画局広域地方整備政策課大都市圏制度企画室長
2011年 同 土地・建設産業局不動産業課不動産業指導室長
2012年 復興庁 統括官付参事官
2015年 国土交通省 土地・建設産業局建設市場整備課長

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