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日建協では2004~2006年度にかけて、提言「公共工事における無報酬業務を解消するために」をもとに、無報酬業務の解消による労働時間短縮にむけて、発注者である国土交通省と意見交換を行ってきました。
無報酬業務とは、対価を伴わない契約外業務と定義していますが、業務の中で本来発注者が行うべき業務や、受発注者の間でどちらがやるべきか責任範囲が不明確であったため、これまでの慣習からなんとなく私たち受注者側が行ってきたサービス業務のことです。

昨年実施した意見交換では、各地方整備局でその存在を認識しており、その解消と工事の適正な運営にむけて様々な施策を作成し活用を始めていることが確認できました。(Compass9月号( Vol.773)参照
しかしながら、作業所からは「各種施策がうまく活用されていない」との声が聞こえてきたため、日建協では、現状を把握し今後の提言活動につなげるために、国土交通省の施策の活用状況及び各工事事務所の対応状況等について作業所アンケート(2007年10月)と作業所ヒアリング(2007年11月~12月)を行いました。
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無報酬業務が減ると?
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作業所アンケートと同時期に行った日建協時短アンケートによると、国土交通省発注の作業所勤務者の1ヶ月の平均残業時間は90.3時間でした。また、1日の業務時間のうち無報酬業務の割合が20%以上を占めると答えた方は3割を超えました。
毎日の業務時間のうちこの無報酬業務の分が減ることによって、私たちの総労働時間の削減につながります。

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国土交通省の施策の運用状況は?
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現在国土交通省は片務性の解消と契約内容の明確化に向けていくつかの施策に取り組んでいます。それがうまく運用されれば私たちの訴えてきた無報酬業務の解消につながります。その現状はどうでしょうか。
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1.契約時の条件明示について
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発注段階で制約を受ける施工条件を具体的に明示することは、工事を円滑に進めるためには重要であり、国土交通省は平成14年に「条件明示について」という通達を出しています。しかし、今回の調査では条件明示が十分ではなく、施策はあまり活用されていないとの結果が出ました。不十分だった内容としては、「用地の未解決」や「工程未調整」といった問題点が記されていなかったことが上げられています。
これらの問題を、現場に乗り込んでから解決するためには、多くの資料の提出が必要となり、そこで無報酬業務が発生していました。

また、解決が難航すると後の工程が厳しくなり、長時間労働につながっていました。このような事態を防ぐためには、請負者側も契約前の段階で施工条件を現場と照らし合わせて、違いがある場合は質問書によって解決しておくことが必要です。北陸地方整備局では具体的な条件明示のチェックリストを作成しています。これを活用すれば、発注者側と共通の認識で条件を確認することが出来ると考えます。
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2.設計図書の照査について
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契約後、受注者側には設計図書の照査が義務付けられています。しかし、これまでは受発注者の責任範囲が具体的に明示されておらず、解釈の違いから受注者側は過度の負担を強いられてきました。

責任範囲の明確化のためにこれまで北海道、北陸、中部、九州の地方整備局で、最近では今年1月に近畿地方整備局で設計照査のガイドラインが作成されました。
この中には受注者の責任範囲の例が具体的に載っています。私たちの責任範囲を知り、受発注者間で本来どちらがやるべき事か協議することが無報酬業務の解消につながります。
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3.設計変更について
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設計図書どおりに工事が進まない事もありますが、その場合は設計変更をすることとなります。設計変更に対し、これまでは手続きの流れが不明確となっていました。

今年になって国土交通省は、片務性の排除と設計変更の円滑化に向けて、今年度中に全地方整備局で「設計変更ガイドライン」を整備すると発表しています。関東地方整備局では先行して「設計変更ガイドライン」を作成しており、その中では「口頭のみの指示」など変更できないケースや、変更できる事例を変更手続きも含めて具体的に示しています。

変更の必要がある場合には、ガイドラインを事前に確認し手順を踏むことが、後の手続きを順調に行うことにつながります。
 
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4.三者会議について
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各地方整備局では当初発注された設計思想の理解、設計図書の不具合と責任の所在を明らかにする事を目的として、発注者、受注者、設計者の三者で協議する三者会議の取り組みが始まっています。開催したところからは有効であったという声が多く聞かれます。
対象工事となっていなくても、受注者側の申し出があれば開催を受け付けるとのことなので、ぜひ活用してみてください。
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5.ワンデーレスポンスについて
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国土交通省は受注者からの質問・指示依頼があった場合、できる限りその日のうちに、またすぐに解決できない場合でも回答日を予告するなど、何らかの回答をその日のうちにする、「ワンデーレスポンス」という施策に力を入れています。
実施した作業所からは、「発注者の対応がすべての面で以前より速くなった。発注者の意識が変わってきた。また実施したい。」との意見がありました。
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そのために私たちが出来ること
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今までは発注者に言われたことは、無報酬業務であっても商商慣習上やむを得ず行ってきたのではないでしょうか。私もそうでした。
しかし、最近は国土交通省も片務性の解消に向け変わってきており、受発注者の責任範囲を明示するなどいくつか施策を行っています。今後の業務で私たちのやるべき範囲を超えているかなと思ったときには、ちょっと立ち止まってガイドラインを確認してみましょう。
その仕事がもし無報酬業務に当たるものだったら、発注者と協議することができる時代になってきています。

そうは言ってもまだまだ発注者には言いづらい雰囲気はあるかと思います。日建協では皆さんが意見を言いやすくなるよう、国土交通省に対し担当者レベルまで施策が浸透するように働きかけていきます。
各施策については地方整備局のホームページに載っていますので、それぞれの段階で活用してください。

Vol.773 無報酬業務の解消に向けた国土交通省の各種対策を活用していこう
 
 Compass Vol.776 一括PDFはこちら(10.64MB)
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