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わたしたちの年金はどう変わったの?


皆さん、ご存知のとおり、わが国は世界でも有数の長寿国です。定年後のますます長くなる老後生活を少しでも安心して送るために、年金は欠かすことの出来ないものとされています。公的年金は、老後の所得保障の柱として、高齢者の老後生活を実質的に支えていくことをその役割としています。2004年、新聞、ニュースでご存知のことと思いますが、わが国は少子高齢化が年々進み、現在4人の現役世代で1人の年金世代を支えております。2050年には2人の現役世代が1人の年金世代を支えるといわれています。このような背景のもと、2004年6月に5年に一度の年金改正が行われました。そこで、2004年年金制度改革で改正された内容の中から、特に私たちの生活に影響するポイントについて紹介していきます

2004年度 年金改正のポイント
@基礎年金の国庫負担割合を引き上げ
基礎年金の国庫負担割合3分の1から2分の1へ引き上げを2004年度から着手し2009年度までに完了します。
A年金額の算定方法にマクロ経済スライド率を新採用
これまでは労働力人口の増減とは無関係に物価スライドをもとに年金額が決定されていましたが、今後、少子化に伴い労働力人口や被保険者数が減少することから、制度の担い手の減少分を年金額に反映させ、年金受給者にも「痛み」を分かち合ってもらう仕組みに改正されます。
B厚生年金給付水準の引き下げ
2004年から厚生年金モデル世帯の年金給付水準59.3%が2023年までに現役世代の50.2%に引き下がります。
C厚生年金保険料の引き上げ
2004年10月から毎年0.354%ずつ引き上げられ、2017年9月以降は18.3%に固定されます。
D国民年金保険料の引き上げ
2005年度から280円ずつ毎年引き上げられ、2017年度以降は1万6,900円で固定されます。
E在職老齢年金の一律2割支給停止を廃止
2005年4月から60〜64歳の被保険者が受け取る年金額(在職老齢年金)の「一律2割カット」の仕組みを廃止し「年金月額」+「総報酬月額相当額」の合計が28万円を超えた分の2分の1が支給カットされます。
F女性の年金の改正
育児休業中の保険料免除期間延長、離婚時の厚生年金の分割、第3号被保険者期間について強制2分割、30歳未満の妻の遺族厚生年金が有期化されます。

●公的年金の骨格の見直し(給付と負担)
 「給付水準維持方式」から「保険料水準固定方式」の導入

公的年金の保険料を決定する大きな要因として、給付と負担のバランスがあげられます。
従来の年金制度の「給付水準維持方式」は、現役世代の手取り賃金の約60%の年金額(被保険者期間40年間、会社員と専業主婦のモデル世帯で、現役世代の手取り約40万円として計算、1ヶ月の年金額24万円)を維持するため、保険料および国庫負担を調整するというものでありました。しかし、この制度をこのまま続けると、少子高齢化の進行等により、最終的には、厚生年金保険の保険料率が年収の約23%、国民年金の保険料が月額2万5000円にまで上昇すると試算されるそうです。そこで、今回の改正において、将来の現役世代の負担を抑えることを目的に、最終的な保険料の水準を固定し、年金給付はその範囲内で見直すという「保険料水準固定方式」が導入されました。
将来の厚生年金保険料と給付水準
現在の私たちの生活に大きく影響されるものとして、毎月の賃金や一時金から支払われる(正確には給与控除、賞与控除されます)厚生年金保険料の金額があげられます。今回の改正により、保険料13.58%(2004年9月迄)を2004年10月から毎年0.354%ずつ引き上げ、2017年9月以降は18.30%に固定されます。(保険料は労使折半)



厚生年金保険料率引き上げによる将来の保険料
(年収ベース)
年 収 現在
2004年10月から
2005年8月まで
将来
料率固定時期
2017年9月以降
本人負担の
増加額
保険料率13.934%
(本人負担6.967%)
保険料率18.30%
(本人負担9.15%)
4,000,000 278,680 366,000 87,320
4,500,000 305,550 411,750 106,200
5,000,000 339,500 457,500 118,000
5,500,000 373,450 503,250 129,800
6,000,000 407,400 549,000 141,600
6,500,000 441,350 594,750 153,400
7,000,000 475,300 640,500 165,200
7,500,000 509,250 686,250 177,000
8,000,000 543,200 732,000 188,800
8,500,000 577,150 777,750 200,600
厚生年金保険料は2004年度から毎年9月に0.354%アップして、2017年以降18.30%へ固定されます。
なお、保険料は労使折半(本人負担50%)で計算しています。
※保険料算出においては、単純に年収ベースに料率を掛けたものとなっています。

◎私たちは厚生年金保険料をどのように収めているのか?
給料から控除
標準報酬月額に保険料率を掛けて計算されます。なお、保険料は会社と折半(1/2負担)し、被保険者(本人)の給料からその半額が控除されます。
一時金から控除
一時金にかかる保険料は、実支給額の1,000円未満を切り捨てた額(標準賞与額)に保険料率を掛けてもとめます。(労使折半1/2負担)なお、一時金の額が1回に150万円を超えた場合は、150万円を上限として保険料を計算します。

☆標準報酬月額とは
毎月の給料は手当支給額等により変動することがあります。そこで、計算を容易にするために、報酬額を30等級に区分した平均的な報酬額を標準報酬月額といいます。決定方法は年1回、原則として4月、5月、6月の給料(各種手当や交通費を含む)の平均額が標準報酬月額となります。その標準報酬月額は、毎年、各個人毎に計算され、その年の9月から翌年の8月までの厚生年金保険料算出時に使用されます。

マクロ経済スライド方式による給付水準引き下げにより将来の年金給付率が下がる
もう一つ私たちの生活に大きな影響を与えるポイントとして、将来、受け取る年金給付率が下がります。今回の改正で、将来のもらえる年金はどのように変わるのでしょうか?
※マクロ経済スライド…年金額の伸びを賃金や物価の伸びより抑えること。

■標準的な年金受給世帯の給付水準は、現在(2004年)の現役世代の平均収入の59.3%から段階的に将来(2023年)には50.2%まで下がる予定です。なお、2023年に50.2%となった以降は同水準を保つといわれています。
仮に現役世代の手取り賃金を40万円として、年金給付率から試算すると
  2004年(現在)40万円×59.3%=237,200円
  2023年(将来)40万円×50.2%=200,800円

  差額▲36,400円(月額)×12ヶ月=▲436,000円(年額)

女性の年金はどのように改正されたか詳しく教えて
離婚時
これまで基礎年金分については、夫婦が離婚しても各自の年金として支給されましたが、配偶者の報酬比例部分については、離婚した配偶者のものでした。改正後は配偶者の同意または裁判所の決定があれば、婚姻期間中の報酬比例部分についても2分の1を限度に分割が可能となります。(2007年4月〜)
また、第3号被保険期間に、配偶者が加入していた厚生年金保険の標準報酬は、離婚の場合2分の1に分割できることになります。ただし、強制的に分割できるのは、施行後の期間のみです。(2008年4月〜)

遺族になった時
妻自身の納付した保険料を年金給付に出来る限り反映させるため、65歳以降は、老齢年金を出来る限り反映させるため、現行水準との差額を遺族年金として支給します。(2007年4月〜)
なお、子のない30歳未満の妻に対する遺族厚生年金は、これまでの終身から5年の有期年金とされます。(2007年4月〜)

育児休業保険料免除期間延長
育児休業期間中の保険料免除は、子が1歳に達するまでありましたが、「子が3歳に達するまで」に拡大されます。(2005年4月〜)

知っておきたい年金制度
学生納付特殊制度
収入の無い20歳以上の学生に対して国民保険料の支払い猶予してくれる制度です。
◆対象となるのは年間給与収入133万円以下の学生
◆学生納付特例期間中の障害や死亡した場合、満額の障害基礎年金または遺族基礎年金が支給されます。
◆学生納付特例期間は、老齢基礎年金の受給資格要件には参入されますが、年金額には反映されません。学生納付特例期間については、10年以内であれば保険料を遡り追納が出来ます。

年金の受給資格期間
公的年金を受給するためには最低25年以上の公的年金の加入が必要です。
◆国民・厚生・共済年金のいずれか一つに25年以上の加入
◆複数の公的年金の加入暦がある場合には、その合計が25年以上

年金を考える時代
ご覧のように、今回の年金改正は私たちにおよぼす影響は少なくありません。特に、これからの年金保険料上昇と、受け取る年金給付水準の低下は、私たちの生活設計に大きく影響を与えます。老後、よりゆとりのある生活をおくるために、公的年金を補うものとして、企業年金や個人年金があります。個人年金は民間生命保険、損害保険、郵便局等の「保険型」「貯蓄型」のさまざまな種類が用意されております。今回の年金改正を機に、ご自分の将来設計について早めに考えてみてはどうでしょうか。日建協においても 個人年金として「積立年金制度」があります。
最後に、公的年金は私たちの身近な生活に関係する社会保険制度の1つであり、生活設計には必要不可欠な項目です。今回の年金改正は国会で改正案の問題点が激しく議論されました。
私たちもこの公的年金の背景、しくみ、問題点について、さらに理解し、今後どうしていくべきかを考えていく必要があると思います。

参考までに
社会保険庁・厚生労働省年金局のホームページに年金について詳しく記載されています。興味のある方はご覧下さい。
●社会保険庁ホームページ http://www.sia.go.jp/
●厚生労働省年金局ホームページ http://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/

2004.11/Vol.759
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