体育館やドームの屋根はどうして丸いの?
 職人さんのズボンは、どうしてお尻のあたりがダボダボなんですか?
 建物の壁にある「定礎」ってなんですか?
「これってなぜだろう?」 
建設産業のなかには、ふだん建設に携わっている私たちにとっても不思議に思うことがたくさんあります。まして家族や他産業の人たちにとっては、私たちの想像以上に不思議に、疑問に感じられることが多いとと思います。ダムやトンネル、超高層ビルの建設技術だけでなく、工事で使う道具、建設現場で働く人たちの服装など、深く掘り進めていくとこれらは建設文化とも言えると思います。私たちの身近にあるなぜなぜをとりあげてみました。
体育館やドームの屋根はどうして丸いの?


 体育館の屋根や東京ドームなどの球技場で丸い屋根の建物を見たことがあると思います。これらの施設はもともとは雨や雪が降ったり、強風が吹いたりすると屋外では何もできない、そういう時のために造られていました。


 ドームという言葉自体は、ラテン語からイタリア語、フランス語、そして英語と伝わってきた言葉で、語義は「家庭の」「屋内の」という意味だそうです。それが王朝時代の壮麗な宮殿などの建物を指すようになり、後年、宮殿の屋根が半球状の丸屋根であることから『ドーム』は半球状のものの代名詞となっています。

アーチ材は直線材に比べて強い真中の図をひっくり返すとアーチになる。脚部には外へ開こうとする力が発生する.

 現代では球技や大規模なイベントには大きな空間が必要であり、その強度を確保するために丸い形になっているのです。丸い形状のものは薄くても変形が小さく、真っ直ぐの材料より強度の高い構造となり、大きい空間を可能にします。曲線構造物の歴史をひも解くと、ローマ時代のアーチ式水道橋にまでさかのぼり、エスキモーの氷の家やなつかしい雪国の「かまくら」もその一つです。アーチが強いのは図のとおりの仕組みですが、そのアーチを360度回転させて、さらに強度を持たせたものがドームの原形と言えます。その原理は「卵の殻が固い」のと同じで、薄くとも丈夫なのです。

現代ではドームの型式も、「冬でも外の感覚を楽しみたい」そんな願いをかなえる防雪の雪国ドーム「晴れの日は開き、雨の日は閉じる」自然にかなった鉄骨造の開閉ドーム「空気圧を利用する」膜を使ったエアドーム「木材で組み上げる」林産地志向の木造ドームなどなど、いろいろなドームが造られてきています。

   協力 銀座ポケットパーク(建築・土木のことがわかる事典より)

職人さんのズボンは、
どうしてお尻のあたりがダボダボなんですか?
  いろいろな作業ズボン。あまり膨らんでいないのもあれば、長いもの、短いものもある。
若い世代は長いタイプが多い。色もカラフルになるようだ。地下足袋は必需品。


現場で働く職人さんがはいているダボダボのズボンのことを「ニッカーボッカー」【Knickerbocer】 と言っています。その意味は、ひざの下で裾をバンド(ボタン)で締めた、ゆったりとしたズボンのことで、もともとは乗馬用のズボンです。建設業に限らず、昔から現場作業衣に要求されるのは運動性、安全性、快適さなどです。
 このニッカーボッカーが多くの職人さんに愛用されるようになったのは、裾を締め、ひざより上の部分をゆったりさせることによって、屈伸作業の多い作業や狭いところの作業などに大変動きやすいからです。また、生地が肌に密着していないので、万が一危険物(箇所)に触れたとき、生地は損傷しても皮膚は無事だったというようなケースはよくあり、後々「ここは気をつけよう」と、安全行動への意識を再確認して作業をすることができるからとも言われています。

 こういった点は機能性が高く、生地が丈夫で柔らかい乗馬ズボンとの共通点も多いことがわかります。反面、足場の上で作業をしているときに、ダボダボの部分が鉄筋にひっかかってバランスを崩し、落下して負傷するという事例もあり、職人の会社経営者の中には、ニッカーボッカーの安全性を疑問視する見方があることも付け加えておきます。

 さて、余談になりますが、昔の職人さんの服装と言えば、腹掛・に半纏(はんてん)と相場が決まっていました。この格好は十八世紀の始めから大正時代までほぼ変わりませんでした。半纏には仕事場との往復用(通い半纏)と作業衣(仕事半纏)とがあり、たいていの職人さんはこの二つを厳密に分けて着ていました。仕事半纏はともかく、通い半纏は婚礼でも葬儀でも着られる職人の正装であったようです。職人の象徴でもあったこの半纏、今ではときどき年配の大工さんが着ているのを見かけるだけで、ほとんど姿を消してしまいました。

 
かわって幅を利かせているのが、いわゆる衣料・ニッカーボッカーです。最近の若い職人さんの中には、機能面よりもデザインやカラフルな色で選ぶ人が増えているようです。
 職人の皆さん、気をつけて仕事がんばって下さい。

参考
・「職人クライシス 建築職人の現在とその展望」小山俊樹 著
・ゼネコン現場所長、労務担当課長、営繕課長の意見

・元鳶職人、現役鳶職人の意見
・作業衣料メーカー(寅壱、鐘廣)のカタログ

建物の壁にある「定礎」ってなんですか?
 みなさんも、街のなかで写真のような「定礎」と書かれた壁を見たことがあると思います。どの建物にも必ずある、というわけではないようですが、わりあい頻繁に見る機会があります。そういえば、これって何なんだろう?

 この疑問に対して、いろいろと調べてみましたが、明確な答えを見つけることはできませんでした。そこで、建築工事のベテラン工事所長さんに聞いてみました。 本来、石造建物の建設工事において建物の安泰を祈り、工事の開始を記念するために礎石を据えることを「定礎」と呼び、そのための儀式を定礎式と呼びました。しかし、現在では状況が変化してきており、コンクリート工事が完了し、建物の主要部分の石張り仕上げをする頃に行う儀式を定礎式と言い、定礎とは、建物入り口近くにはめ込まれる銘板の呼称になっています。

 普通、この定礎板には、施主の代表者の筆跡で「定礎」の文字と、竣工年月日や施主名が刻まれていることが多いようです。でも、定礎の本来の意味から考えると、竣工年月日ではおかしいのですが…。
 この儀式、つまり定礎式は、「定礎祭・いしずえさだめのまつり」とも言われる神事です。この儀式は「定礎の辞奉読」から始まり、「序幕」「鎮めの儀」「礎の打槌」「定礎石固めの儀」と続き、神前での玉串奉納に移ります。

 定礎板の裏には定礎箱が取り付けられていて、建物の名称や所在地、着工・竣工年月、施主や施工者等の概要がしるされた定礎銘板や図面、当日の官報や新聞、新品の紙幣や硬貨などを納めます。

 また、施主が企業の場合など、社史や事業報告などを納めることもあります。しかし、これも時代の流れだと思いますが、定礎箱も取り付けず、定礎板だけを外壁に埋め込む場合も多いようですし、定礎式も省略することが多くなっています。
建設に関わる不思議なこと、疑問など、日建協までお知らせ下さい。
関係各所に取材・調査して紹介したいと考えています。

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